最近、職場で米国の個別株が、ちょっとしたブームになっています。
特に30代。1株あたりの値段が安い株(いわゆる低位株、ボロ株とも呼ばれます)を見つけて、10倍、20倍を狙う。
そんな話が、あちこちで聞こえてきます。
その姿を見ていて、僕はなんとも言えない気持ちになりました。
なぜなら、それは投資で負け続けていた頃の、過去の自分にしか見えなかったからです。
- これから投資を始めようとしている人
- 個別株で「一発逆転」を狙いたくなっている人
- 家族のお金で、大きく投資しようとしている人
職場は、お祭り騒ぎだった
話題はいろいろでした。
ビットコインのマイニング関連の株が上がるらしい。
今は新規上場(IPO)の投資が熱い。
なかでも盛り上がっていたのが、SpaceX(スペースX)の抽選応募でした。
「応募した?」「当選した?」「何株取れた?」
そんな会話で、職場はかなり沸いていました。
(SpaceXは、イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発の会社です。ロケットの打ち上げや、Starlinkという衛星インターネットを手がけていて、先日アメリカの市場に上場したばかり。史上最大級の規模として、世界中で話題になりました。)
その熱気を見ていて、僕が感じたのはワクワクではなく、むしろ不安でした。
なぜなら、これだけ盛り上がっていると、人は「上がること」しか考えられなくなるからです。
下落するシナリオは、きっと誰の頭にもない。だからこそ、全力で買いに行ってしまう。
「倍になる」は、「半分になるかもしれない」と同じこと
ここで、忘れてはいけないことがあります。
倍に上がる可能性がある株は、同じだけ下がる可能性もある、ということです。
値動きが大きいというのは、上にも下にも大きいということ。
だから本来、株を買うときは「ここまで下がったら売る」という撤退基準(損切りライン)を、買う前に決めておかないといけません。
でも、盛り上がっている時の人は、こう考えます。
「自分が買いたいと思った株が、下がるわけがない」
「下がったら、その時に考えればいい」
過去の僕も、まったく同じでした。
無限ナンピンの果てに待っている「塩漬け」
ここからが、僕が身をもって経験した地獄です。
撤退基準を決めずに買った株が、下がり始めたとき。人はどうするか。
「上がると思って買ったのに……」と少し焦りつつ、「いや、ここが底だろう」と、さらに買い増します。
でも、また下がる。今度は含み損を取り戻したくて、さらに買う。
下がれば下がるほど、何度も何度も買い増していく。これが、いわゆる無限ナンピンです。
そして、相場に大きな下落が入ったとき。含み損が一気に膨らみます。
人間というのは、自分が許容できる損失額を超えた含み損を抱えると、心理的にもう切れなくなります。
損切りができず、塩漬けにしてしまう。切りたくても切れない。手放したいのに手放せない。
こうなると、大きな含み損を抱えたまま、資金がそこにロックされます。
本当は買いたい別の株があっても、お金が動かせない。チャンスを逃し続ける、機会損失だけが増えていく。
僕は20代(厳密には27歳まで)、これを山ほど繰り返しました。
同じ失敗を、本当に自分は病気なんじゃないかと疑ったくらい、何度も何度も。
ただ、勘違いしてほしくないことがあります。現物取引(自分のお金の範囲で買う取引)でも、塩漬けにしていいわけではありません。損切りせずに抱え続ければ、さっき書いた”機会損失”は、そのまま起こります。
何度も言いますが、現物でも撤退基準(損切りライン)を決めておき、想定したシナリオが崩れた時点での損切り・撤退は必須です。
それでも現物には、ひとつだけ救いがあります。
最悪でも、失うのは”自分が出したお金”の範囲まで。借金を背負うことはありません。
本当に怖いのは、レバレッジ取引(借りたお金で大きく張る取引)です。
損失が一定ラインを超えると、自分の意思とは関係なく強制ロスカット。その瞬間、資金が一気に吹き飛びます。
僕は、そのゼロを何度も見ました。
それでも僕が助かったのは「若かったから」
ただ、ひとつだけ。今振り返って「本当に運が良かった」と思えることがあります。
それは、僕が失敗したのがとても若い時期で、当時は軍資金も少なかったことです。
どれだけ派手に負けても、損失の金額そのものは少額で済んだ。
痛い思いはたくさんしたけれど、生活が崩れるほどの傷にはならなかった。
それに当時の僕は、「投資は最初は負けるもので、勝てるようになるまでには数年かかる」と思っていました。
だからこそ、いきなり大きく張らず、少額で続けることができた。これも結果的に自分を守ってくれました。
この「ダメージが小さくて済んだ」ことが、僕にとっては唯一の救いでした。
だからこそ何度も立ち上がって、今こうして続けられています。
同僚は、貯めた500万円を1銘柄に全部入れていた
話を、職場のブームに戻します。
同僚のひとりが、まさに昔の僕と同じことをしていました。
自分の場合は当時軍資金も少なかったので1桁少ないですが・・・
彼は給料も上がり、家族を持ち、ここ最近になって投資を覚えたばかり。
そして、コツコツ貯めてきた約500万円を、たった1つの低位米国株(ボロ株)に全部入れていたんです。
低位株というのは、株価が安い銘柄のこと。安く買えるぶん「化ければ一気に何倍にもなる」という夢があります。
でも裏を返せば、業績が苦しいから株価が安い、というケースも多い。値動きが激しく、リスクの大きい世界です。
その話を聞いたとき、正直、ゾッとしました。
本人は「絶対に上がるから大丈夫」「これを元手にどんどん増やしていく」と、自信たっぷりに語っていました。
でも僕には、その先がどうしても明るく見えなかった。
かつての自分が通った、あの道だからです。
仮に今回勝てたとしても、その先がもっと怖い
ここで、こう思う人がいるかもしれません。「でも、上がったら大儲けじゃないか」と。
そうです。運良く当たれば、500万円が2000万円になることもあるでしょう。
でも、僕が一番怖いと思っているのは、実はそこなんです。
仮に今回勝てたとして。その人は間違いなくこう考えます。
「やっぱり自分のやり方は正しかった」「次はもっといける」と。
そして、また「絶対に上がる」次の1銘柄を探し始める。
今度は2000万円を全部つぎ込んで、さらに倍にしようとする。
一度勝つと、感覚が麻痺して、賭ける金額がどんどん大きくなる。リスク管理は頭から消える。
そして、たった一度の負けで、それまでの利益も元手も、まとめて吹き飛ぶ。
つまり、最初の一発で勝ってしまうことは、むしろ一番危険なんです。
500万円を失うことより、「500万円を2000万円にして、その2000万円を次でなくす」未来のほうが、僕にはずっとはっきり見えてしまいました。

派手に勝つことより、”退場しない”こと。長く市場に居続けた人が、結局いちばん強いんです🌳
失敗は最高の教科書。ただし「再起できる金額」なら
ここが、この記事で一番伝えたいことです。
僕は、たくさん失敗して学ぶことを否定しません。
むしろ逆で、遠回りに見えて、失敗を重ねることこそが結局は一番の近道だと本気で思っています。今の僕があるのは、あの数えきれない失敗のおかげです。
だから本来なら、同僚にも「いっぱい失敗して覚えていきな」と言いたい。
でも、今回ばかりは、それが言えませんでした。
彼が賭けているのが、家族のお金500万円の全額だからです。
失敗から学ぶのが正しいのは、それが「失敗しても立ち直れる金額」だからこそ。
僕が助かったのは、若くて、失っても少額だったから。給料が上がり、守るべき家族がいる人が全財産を1銘柄に賭けるのは、ダメージが大きすぎる。
それはもう、投資ではなく投機です。
家族のお金は、そういう使い方をしていいお金ではないと思うんです。
だから、これから始める人にこそ伝えたい
もし、これから投資を始める初心者の方がこれを読んでくださっていたら。
僕の失敗の上で、これだけは伝えさせてください。
最初は、増えるスピードが遅くてもいい。地味でもいいんです。
まずは少額から、たとえばNISA口座でインデックスファンドをコツコツ積み立てる。そんな「退屈なくらい堅実な」やり方から始めてみてほしい。
10倍、20倍を狙うような派手な張り方は、家族のお金でやることではありません。
失敗するなら、立ち直れる範囲で。家族のお金は、大切に使う。
数多く負けてきた僕だからこそ、心から、そう思います。
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※この記事は個人の経験と考えを記したものであり、特定の投資手法や金融商品の売買を推奨・否定するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。



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