投資を始めようと調べていると、必ず出てくる言葉があります。
「まずは生活防衛費から」
でも、正直こう思いませんでしたか。

それ、本当に必要?
周りはもう投資で増やし始めている。
自分も早く始めないと、置いていかれる気がする。
SNSを開けば、「20代でFIREしました」みたいな投稿がゴロゴロ出てきます。
見るたびに、また置いていかれた気がして焦る。
生活防衛費なんて、あとから貯めればいいんじゃないか。
若いし、大きな病気もしていないし、仕事を辞めるつもりもない。
僕も、まったく同じことを思っていました。
ただ、僕の場合は少し事情が違いました。
投資を始めたのは19歳のときです。
あの頃、周りに投資をしている人はいませんでした。
いたのかもしれませんが、誰も言っていなかったと思います。
僕も、誰にも言いませんでした。
だから、仲間を探せる場所はSNSしかなかった。
そこに流れてくるのは、勝った話ばかりです。
負けた話を、わざわざ書く人はいません。
比べる相手が、SNSの中にしかいなかった。
いま思えば、これがいちばんの問題でした。
顔も見たことがないし、そもそも本当にそういう人が存在するのかも分かりません。
そんな相手と張り合おうとしていたのが、そもそもの間違いでした。
そして実際に、生活防衛費を持たないまま投資を始めました。
その結果どうなったかを、この記事に書きます。
先に結論だけ言うと、生活防衛費は、貯金とはまったく別のものでした。
この記事でわかること
- 生活防衛費は、何のためのお金なのか
- いくら必要か(会社員と自営業でこんなに違う)
- 僕が1年分を持っている理由
- 今日からやること3つ
生活防衛費とは、何のためのお金か
生活防衛費は、収入が止まっても、暮らしをそのまま続けられるようにしておくお金です。
- 病気やケガで働けなくなった
- 会社が急に傾いた
- 家族の介護が必要になった
こういうことは、いつ起きるか分かりません。
一時的に生活が不安定になっても、このお金があれば持ちこたえられます。
名前のとおり、守っているのは「生活」です。
そして生活が守られていれば、投資しているお金に手をつけなくて済みます。
ここが大きいところなので、もう一度書きます。
生活防衛費が守るのは、まず「生活」です。
生活が守られた結果、投資に手を出さずに済みます。
お金が必要になるのは、たいてい景気が悪いときです。
株価が暴落しているときに限って、生活のほうでもまとまったお金が必要になりがちです。
そのときに生活防衛費がないと、どうなるか。
暴落中の株を売ってでも、現金に変えるしかありません。
評価額がマイナスでも、とにかく現金に変えるしかない。
結局、いちばん安いところで投資商品を手放すことになります。
資産運用をしているのに、元も子もないですよね。
生活防衛費は「生活のお金」です
もうひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。
お金は、大きく2つに分けられます。
- 生活のお金(日々の生活費、生活防衛費、数年以内に使うと決まっているお金)
- 投資のお金(当分使う予定がなく、減っても暮らしに影響しないお金)
生活防衛費は、前者です。
投資のお金とは、はじめから別の箱に入っています。
この2つが混ざっている状態が、いちばん危ないです。
僕は19歳から約10年、この2つをまるごと混ぜていました。
だから相場が下がるたびに、生活のほうが揺れました。

いくら必要かは、働き方で変わります

一般的に言われているのは「生活費の半年〜2年分」です。
幅が広すぎて、これだけだと決められません。
判断の分かれ目は、働き方です。
| 働き方 | 目安 |
|---|---|
| 会社員・公務員 | 生活費の半年〜1年分 |
| 自営業・個人事業主 フリーランス | 生活費の1〜2年分 |
同じ人間なのに、なぜこんなに違うのか。
「安定しているから」だけでは説明が足りないので、もう一歩踏み込みます。
会社員・公務員が少なめでいい理由

働けなくなったときに、国の制度が支えてくれるからです。
傷病手当金
病気やケガで働けなくなったとき、給料のおよそ3分の2が支給されます。期間は支給開始日から通算で最長1年6ヶ月。3日連続で休んだあと、4日目から対象になります。
失業保険(雇用保険の基本手当)
仕事を辞めることになっても、次が決まるまでの間、一定期間お金が入ります。
つまり会社員・公務員は、収入がゼロになるまでに、クッションが何枚か挟まっているわけです。
だから手元の現金は半年〜1年分でも、なんとか回ります。
自営業・個人事業主が多めに必要な理由

上のクッションが、ほぼありません。
国民健康保険には、傷病手当金の制度がありません(自治体によって例外はあります)。
雇用保険にも入れないので、失業保険もありません。
つまり、働けなくなった瞬間に収入がゼロになります。
そこから回復して仕事に戻るまで、支えてくれるのは自分の貯金だけです。
さらに、自営業は収入そのものが月ごとに動きます。
「いい月」と「悪い月」があるので、悪い月が続いても耐えられる厚みが要ります。
だから1〜2年分です。多いのではなく、それが必要な人たちです。

同じ「働けなくなる」でも、支えてくれる制度があるかどうかで必要な金額は変わります
そこから、自分の状況で足し引きする
働き方で大枠を決めたら、自分の状況で調整します。
少なめでいい方向
- 共働きで、片方が倒れてももう片方の収入がある
- 独身で、支えるべき家族がいない
- 実家など、いざとなれば頼れる場所がある
多めにしたい方向
- 一馬力で家族を養っている
- 子どもがいて、教育費のタイミングが読めない
- 持病があり、働けなくなる可能性が高い
結局のところ、「自分が倒れたとき、何ヶ月で立て直せるか」が答えです。
ネットの平均値ではなく、自分の生活で計算してください。
1ヶ月の生活費 × 必要な月数 = 生活防衛費
1ヶ月の生活費が分からない方は、ここが先です。
「お金が貯まらない…」の答えは、家計簿じゃなく”見える化”だった
※傷病手当金の制度内容は2026年8月時点のものです。詳しくは加入している健康保険組合や協会けんぽでご確認ください。
僕が1年分を持っている理由
僕は1年分を持っています。
さっきの表でいくと、僕は会社員側なので半年分でも足りる立場です。
それでも1年分にしています。
理由は、20代前半に、その逆をやっていたからです。
生活費で、投資をしていた
負け続けるようになったのは、20代前半です。
当時の僕は、生活防衛費という言葉すら知りませんでした。
余ったお金で投資をしていたのではありません。
生活費そのものを、FXに入れていました。
だからロスカットを食らうと、その月は本当にお金がありません。
次の給料日まで、ただ待つ。そんな日々でした。
そして、リボ払いにたどり着く
給料日まで待てないこともあります。
クレジットカードの支払いができない月が出てきました。
そこで見つけたのが、リボ払いという神制度です。

今月払えなくても、来月に延ばせる。当時の僕には、そう見えていました
もちろん、神様なんかじゃありません。
あれは貧乏神です。

払えないぶんが積み上がって、そこに手数料が乗って、来月の自分がもっと苦しくなる。
苦しくなるから、また取り返そうとしてFXに入れる。
また溶かして、また払えなくなる。
きれいな負のループでした。
ストレスが、体にまで出ていました
夜中にふと目が覚めると、まずスマホで日々膨れ上がるマイナスのポジションを見ていました。
確認しないと眠れないので、毎日寝不足でした。
胃は、ずっと痛かったです。
給料は平均くらいでした。
余計なことさえしなければ、普通に暮らせたはずなんです。
それなのに、自分でわざわざ苦しい生活をつくっていました。
一番きつかったのは、お金が減ったことではなかった
逃げ道がなかったことです。
余裕がゼロだと、判断がおかしくなります。
「今月中に取り返さないといけない」と思った瞬間から、チャンスじゃないところまでチャンスに見えてしまう。
冷静に見れば入る場面じゃないのに、入ってしまう。
それは相場が分かっていなかったからではなく、待てる余裕がなかったからです。
生活防衛費があると、暮らしが揺れません。
暮らしが揺れないと、慌てて動かなくて済みます。
僕にとって生活防衛費は、生活を守るお金でした。
そして生活が守られた結果、自分の判断まで守ってくれるお金でした。
だから多めに持っています。
あの頃の自分に戻らないための備えです。
どこに置くか
普通預金でいいです。
生活防衛費は増やすためのお金ではありません。
必要なときに、すぐ引き出せることがすべてです。
| 置き場所 | 向かない理由 |
|---|---|
| 定期預金 | 引き出しに手間がかかる |
| 投資信託 | 必要なときに減っている可能性がある |
| 個人向け国債 | 1年間引き出せない |
金利がもったいないと感じるかもしれませんが、
生活防衛費の役割は「増えること」ではなく「そこにあること」です。
僕も、ふつうの銀行口座に置いています。
特別なことは何もしていません。
ただし、生活費を出し入れする口座とは分けてください。
同じ口座にあると、残高が多く見えて、いつのまにか使ってしまいます。
口座を分けるだけで「これは使わないお金」という線が引けます。
僕が昔できなかったのは、まさにこの線引きでした。
口座を増やさなくても、分けられます
「口座を分けろと言われても、新しく銀行を作るのは面倒」。
そう思う方も多いと思います。
僕が使っているネット銀行には、1つの口座の中に「箱」を複数作れる機能があります。
箱には名前をつけられるので、「生活防衛費」と書いた箱を作って、そこに入れています。
しかも、給料日に自動で移す設定にできます。
自分の意志で毎月移す形にしていたら、たぶん続いていません。
※銀行によって機能名や仕様は違います。お使いの銀行で確認してみてください。
貯まる前に、投資を始めてはいけないのか
よく聞かれそうなので、正直に書きます。

「1円も投資してはいけない」とまでは思いません
生活防衛費が満額貯まるまで待っていたら、何年もかかる人がいます。
その間に投資の経験を積めないほうが、長い目では損かもしれません。
ただし、順番は絶対に守ってください。
- まず生活防衛費を貯め始める(積立を設定する)
- 同時に、なくなっても生活に影響しない額で投資を始める(月1,000円でもいい)
- 生活防衛費が目標に届いたら、投資の額を上げる
やってはいけないのは、生活費や、来年使う予定のお金を投資に回すことです。
これをやると、下がったときに必ず売ることになります。
今日からやることは、3つだけです
ここまで読んで「じゃあ何から始めよう」と思った方へ。
順番はこうです。
① 1ヶ月の生活費を出す
まずここです。金額が分からないと、目標も決まりません。
家計簿をつけていない方は、直近1〜2ヶ月の引き落としを見るだけでも十分です。
② 目標額を決めて、紙かスマホに書く
1ヶ月の生活費 × 必要な月数 = 目標額
会社員なら半年〜1年分、自営業なら1〜2年分が出発点です。
頭の中だけで決めないでください。 書いていない目標は、なかったことになります。
③ 口座を分けて、自動で貯まる形にする
生活費の口座とは別に、生活防衛費専用の口座をつくります。
そして給料日に自動で移す設定にしてください。
余ったら貯める、では貯まりません。
先に移して、残りで暮らすほうが確実です。

この3つが終われば、あとは時間が解決してくれます
毎月何かを判断する必要はありません。
そして、貯まりきる前でも投資は始めていいというのが、前の章で書いたことです。
生活防衛費が貯まるのを待って、5年間何もしないほうがもったいない。
大事なのは、どちらか片方ではなく、両方を同時に進めることです。

まとめ
- 生活防衛費は「生活を守るため」のお金。守られた結果、投資に手を出さずに済む
- 金額は働き方で決まる。会社員は半年〜1年分、自営業は1〜2年分が出発点
- 置き場所は普通預金。生活費の口座とは分ける
- 貯まる前に少額から始めるのはOK。ただし順番は守る
生活が続けば、投資も続けられます。
投資でいちばん大事なのは退場しないことだと思っていますが、その前に守るのは生活のほうです。

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※この記事は僕自身の経験と考えをまとめたものです。特定の商品や売買をすすめるものではありません。



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